大阪電気通信大学

十二支季

概要

B2サイズのイラスト12枚と、それぞれに合わせた掛軸風の表装デザインの制作をしました。

干支の一番目は子ですが、本作品では一月に丑を割り当て、以降は二月と寅、三月と卯というように順に組み合わせ、十二月に子が来る構成としています。
これは、旧暦において月の異名として十二支が用いられていた際の対応関係を、現代の新暦の月に当てはめたことによって生じたずれによるものです。
旧暦では子の月は十一月を指し、この旧暦十一月は新暦ではおおよそ十二月にあたるため、本作品では十二月に子を配置しています。

正月飾りや紅白を使いおめでたい新年らしいイラストにしました。イラストの中だけでなく表装にも金色を使い、華やかさを演出しています。現代だと、身近にある牛は乳牛と肉牛だと思い、それぞれをイメージしたキャラクターをデザインしました。
また、家畜の屠殺と切腹における介錯には、「苦しみを最小限に抑えるための行為」という共通点があると考え、肉牛イメージの子には、介錯人の要素を取り入れました。

二月のイベントとしてはバレンタインをメインに据え、干支の虎と組み合わせるにあたり、「肉食系女子」をモチーフとしたキャラクターとしました。自信に満ちた、強気な女の子です。
また、バレンタインの持つ青春的な雰囲気を表現するため、設定は学生とし、衣装にはセーラー服を採用しました。虎の子の髪色は黄色とし、セーラー服の濃紺との対比によって、ビビッドで引き締まった配色を意識しています。

虎は、一休さんの屏風絵や『山月記』の挿絵など、絵画や物語の中で描かれてきた存在という印象が強くありました。そのため、本作品では描かれた存在でありながら、現実に飛び出してくるような迫力を目指し、水墨画調の虎が文字通り飛び出るような構図で直接的に表現しました。

三月にはホワイトデーがあることから、兎は二月の肉食系女子である虎の対となる存在として、草食系男子のキャラクターとしてデザインしました。
兎といえば月で餅をつくイメージが広く知られているため、その象徴として杵を持たせています。

三月は実際にはまだ寒さの残る時期ですが、三寒四温を経て徐々に暖かさが感じられ始める季節でもあります。そこで、二月のイラストと対照的に、全体を暖かみのある色調で表現しました。

四月といえば桜です。桜から連想される「桜の樹の下には屍体が埋まっている。」という印象的なフレーズをもとに、桜の墓守というイメージを形にしました。
春らしい鮮やかさの中に、人の血に染まっているかもしれない妖しさを重ね合わせることを意識し、表現しています。

龍と蛇はしばしば混同されるほど近しい存在であることから、影や水鏡を通して本来の姿が映し出されるという共通の表現を持たせました。
蛇の持つ美しくしなやかな身体表現に魅力を感じているため、そのイメージを長い髪によって表現しています。また、背景に配した蛇の目は、「五月雨」とも呼ばれる梅雨の雨が生む波紋にも見えるよう意図しました。

子どもの日のモチーフは、子どもらしいカラフルさを意識して取り入れつつ、主役のキャラクターがしっかりと視線を集める存在として成立することを目指しました。

六月も梅雨の時期であることから、雨そのものではなく、てるてる坊主をメインモチーフとして選びました。
また、ジューンブライドの月でもあるため、花婿を思わせる白い衣装と、真っ白なてるてる坊主の要素をキャラクターデザインに取り入れています。

結婚によって新たな「縛り」が生まれることと、てるてる坊主の首を縛って吊るす姿を重ね合わせることで、幸福だけではない結婚式の側面を表現しました。さらに、結婚式では縁起がよくないとされる鋏や櫛と同系色の盃を用いるなど、細部にも不穏さを忍ばせています。

馬の要素の取り入れ方には苦慮しましたが、馬具の装飾にも用いられる大きなタッセルをあしらい、背景には、ヨーロッパの一部で結婚式の縁起物とされてきた馬蹄を配置しました。

羊は眠る際に数える存在であることから、絵本の中のような夢の世界と現実の境界を行き来するようなイメージで表現しました。衣装も、眠りを連想させるネグリジェに近いデザインとしています。
また、七月の異名である文月は「本を干す習慣」に由来するとされていることから、本を大きく開いたモチーフを画面に配置しました。

さらに、笹や短冊、カササギといった要素を取り入れることで、七夕の情景を表現しています。

八月×申

近年のうだるような夏の暑さを、一般的な夏のイメージで見られる爽やかな青ではなく、見る人にまで蒸し暑さが伝わるような赤で表現しました。
画面全体は暖色で構成しつつ、夏が怪談の季節でもあることから、妖怪を思わせる造形とし、不気味さやおどろおどろしさを前面に押し出しています。

お月見のある九月は月の印象が強い季節ですが、鶏は世界的に「太陽の鳥」として知られていることから、太陽の化身である酉が月を従えるようなイメージで制作しました。
羽を大きく広げることで、軽やかさとともに、太陽の化身らしい「我こそ主役である」という自信を表現しています。

また、九月はお彼岸の季節でもあるため、線香の煙や彼岸花を画面に配置しました。鶏には、死者の魂の道案内をするとされる伝承もあり、その意味合いも踏まえた表現としています。

紅葉の季節であることから、葉を赤く染める役割を担うキャラクターとして設定しました。書類に判子を押すように、全国の葉を紅葉させていく仕事をしているというイメージです。
また、「食欲の秋」にちなんで食べることが好きな性格とし、仕事中につまみ食いをしないよう、口枷を付けられています。

さらに、ハロウィンのある月でもあるため、仕事の最中に不思議なものが見えてしまうかもしれない、という意識で制作しました。

旧暦十月、現在の十一月に行われる、子孫繁栄と無病息災を祈る「亥の子の祝い」を、「子」、すなわち小さな子どもとして文字通りに解釈しました。そこに、同じく十一月に行われる七五三のイメージを重ねて制作しています。
小さな子どもでありながらも迫力が出るようにし、七五三が「記録する行事」であることから、画面はフィルム調の、どこか昔を思わせる表現としました。その結果、過去でありながら、現在や未来へとつながっていく時間の流れを感じさせる演出を意識しています。

また、大きな窓には透かし模様のように、花を思わせる意匠として牡丹鍋のモチーフを取り入れています。

幼い頃、クリスマスの夜に目を覚ました際、胸の上を小人が歩き、横に置いていた靴下の中へ入っていく光景を見た記憶があります。その体験から、私の中でサンタクロースは「小人」のイメージとして捉えられています。
このイメージをもとに、小さく、数多く存在する鼠とサンタを重ね合わせて描きました。

また、煙突から家へ入るサンタの逸話になぞらえ、今回は井戸を通って地獄へとプレゼントを配りに向かう場面として表現しています。

十二支を十二か月と重ね、円形に配置することで、四季の巡りを表現しました。配色は、循環を感じさせる虹色と、重厚感のある黒を使い、シンプルなロゴとしてまとめています。

作者プロフィール

井上夏芽

最近カキフライのおいしさを知りました

コメント


やま2026-02-15T05:37:18

それぞれ月のイメージに合わせてイラストの質感表現も違い、とても興味深いなと感じました。

金子飛真2026-02-11T21:42:32

とても幻想的な世界観で思わず魅入ってしまいました。あまり関係が無さそうだと思うことにも共通点を見出し、それをデザインに取り入れているのが凄いと思いました!キャラクターだけでなく、背景にもしっかり意味を持たせていることで説得力のある世界観を作り上げていて魅力的だと感じました。

北井飛陽真2026-02-10T20:24:23

十二支とそれぞれ月のイベントやモチーフが組み込まれたイラストが掛軸の雰囲気と非常にマッチしておりとてもすてきで見てると目が奪われてしまう作品となっており感動しました。個人的に二月×虎のイラストと四月×辰のイラストがとても好きです。タイトルロゴの色合いと十二支季のフォントと十二支のイラストが入っているところにこだわりを感じました。

田中ちはる2026-02-09T18:17:58

キャラクターの表情が素敵ですね。全体の雰囲気が統一されていて素敵なイラストだと思います。背景も書き込まれていて見応えがあります。